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『アメリカ研究』第58号「特集論文」募集のお知らせ

2023.04.24 年報アメリカ研究

『アメリカ研究』第58号の特集テーマは,「アメリカと権威主義」です。趣意は以下の通りです。

 2021年に発足したバイデン政権は,世界を,米国を中心とする「民主主義国家」と「権威主義国家」との戦いの場と位置づけ,民主主義や人権を蹂躙する後者の代表格として中国やロシアを批判してきた。この二元的な世界認識は,2022年2月にロシアがウクライナに軍事侵攻して以降,ますます強化されている。

 しかし,中露の「権威主義」を批判するアメリカの民主主義そのものが危機的な状況にある。2020年大統領選に敗北したドナルド・トランプが選挙結果に執拗に疑義を呈したことは,以後の米国の政治社会に大きな影を落としてきた。この大統領選で大規模な不正があったと考える米国民は3分の1,共和党支持者になると7割超に及ぶ。2021年1月には,トランプの「不正選挙」の訴えに促された暴徒たちが連邦議会議事堂を襲撃するという前代未聞の出来事が起こった。

 二大政党の1つである共和党の権威主義化も懸念される。世界の民主主義に関する研究で知られるV-Dem研究所の調査によれば,過去20年間で非自由主義的な性質を顕著に示すようになった共和党は,今やヨーロッパの中道右派勢力よりも,トルコのエルドアン政権やハンガリーのオルバン政権のような権威主義国家の与党に近いという。

 そもそも,血筋や宗教や軍事的権威ではなく法に統治の新たなよりどころを求めたアメリカは,権威を笠に言論の自由を統制することを何よりも忌避してきたはずである。しかし,学問の権威さえ無力化しようとする反知性主義の強化や,IT革命に伴う不確かな情報の氾濫や陰謀論の拡散が示すとおり,アメリカの知性は危機に瀕している。内外にはびこる権威主義に誘発された昨今のディストピア的状況は,この国が社会や文化の諸領域に埋め込んできた「権威主義の暴走を抑止するメカニズム」とその機能不全を歴史的に再検証する必要性を提起している。

次号の特集では標記のテーマのもと,政治外交,歴史,文化,文学,社会,経済の視点からアメリカの民主主義の危機を掘り下げる論考を募集する。

 *「特集論文」に応募希望の会員は,2023年6月末日までに,氏名・所属・論文題目および構想・資料などの説明(400字程度)を電子メールで,年報編集委員会宛て(nenpo[AT]jaas.gr.jp([AT]を@に換えてください)にお申し込み下さい。その際のタイトルは「『アメリカ研究』特集応募」と明記してください。執筆要項は学会ウェブサイトを参照のこと。原稿締め切りは2023 年8 月31 日(木)とします。

年報編集委員会

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